木材の生物劣化基本情報
2.シロアリ
(1)シロアリの被害
シロアリは床下や周囲の土壌から住宅に侵入することが多いため、土壌に近い土台や柱、筋交いの下部、大引き、床束、上がり框などに被害が多く発生します。ウッドデッキの防蟻対策を怠ると、ウッドデッキ経由で住宅にシロアリが侵入することもあります。掘立柱、木杭、木製フェンスなども被害に遭います。また、シロアリは、家具や建具、立ち木も食害し、木材だけでなく、本や段ボールなどの紙も食害します。暖かく水分を透さない発泡スチロールには好んで侵入します。日本全土に生息するヤマトシロアリは、乾燥に弱いため土壌から離れたところまで被害が及びませんが、雨漏りや漏水など水分の供給があれば、屋根まで被害が及びます。
↑住宅土台の被害
↑合板の被害↑梁の被害↑発泡スチロールの被害
↑ウッドデッキの被害
↑フェンスの被害↑雨漏りによる2階屋根部分の被害↑樋からの漏水による梁の被害
(2)シロアリの種類
日本に生息しているシロアリは、主に在来種のヤマトシロアリ、イエシロアリ、アメリカ西海岸原産のアメリカカンザイシロアリです。ヤマトシロアリは、北海道の東部を除く日本全土に生息します。イエシロアリは関東以南の海岸線に沿った温暖な地域に生息します。アメリカカンザイシロアリは、1975年にはじめて東京都江戸川区で発見されて以来国内各地に拡散し、25都道府県で発見されています。ヤマトシロアリもイエシロアリも生活のために水を必要としますが、アメリカカンザイシロアリは乾燥に強く、木材に含まれる微量の水分だけで生活できます。ヤマトシロアリは、乾燥に弱く、湿ったところでしか生きられませんが、イエシロアリは、水を運ぶ能力が高く、乾燥した木材も食害し、被害が広範囲に及びます。アメリカカンザイシロアリは、屋根回りから住宅に侵入し、屋根裏など水の供給のない部分に留まって生活できるため、従来の床下中心の防蟻処理では住宅を守れません。
↑ヤマトシロアリの職蟻と兵蟻↑イエシロアリの職蟻と兵蟻↑アメリカカンザイシロアリの職蟻と兵蟻
(3)シロアリの発見法
シロアリの発見のために最も簡単で分かりやすいのは羽蟻を発見することです。ヤマトシロアリの羽蟻は毎年4~5月(寒冷地は遅れる)の日中に一斉に飛び立ちます。これを群飛と言います。イエシロアリの羽蟻は5~7月の夕方から夜に群飛し、灯火に集まります。アメリカカンザイシロアリの羽蟻は、3~11月の日中に群飛します。飛び立った羽蟻は、カップルになり羽を落として新しい巣を作りますので、落とされた羽もシロアリ発見の目印になります。
次に蟻道です。蟻道とは、シロアリが土や糞で作ったトンネルで、乾燥に弱いシロアリはこのトンネルの中を通って移動します。蟻道は、主に床下にできますので、点検のためには床下にもぐることが必要です。風通しが悪かったり何かの陰になっている場合、屋外でも蟻道ができることがあります。アメリカカンザイシロアリは蟻道を作りません。
アメリカカンザイシロアリは1mm弱の砂粒状の糞をします。肉眼では砂粒のように見えますが、ルーペで拡大して見ると俵型で、6本の筋があります。これがアメリカカンザイシロアリ発見の目印になります。アメリカカンザイシロアリは、木材の中から決まった穴を通して糞を外に放り出すため、穴の下はピラミッド状に糞が積もります。
↑イエシロアリの羽蟻
↑ヤマトシロアリの羽蟻
↑アメリカカンザイシロアリの羽蟻
↑ヤマトシロアリの群飛↑羽蟻が落とした羽↑蟻道↑蟻道を崩したところ。中をシロアリが行き交っている。↑蟻道↑アメリカカンザイシロアリの糞↑屋根裏に堆積したアメリカカンザイシロアリの糞↑住宅外壁から落ちたアメリカカンザイシロアリの糞
(4)住宅のシロアリ対策
住宅をシロアリから守るためには、新築時の薬剤による予防処理と5年毎の再処理をお奨めします。処理する部分は、図に示したコンクリート基礎の上端から1mの範囲の木部と床下土壌です。木部の処理には木部処理剤(防蟻・防腐効果)、土壌の処理には土壌処理剤(防蟻効果)をお使いください。但し、この予防処理で防げるシロアリはヤマトシロアリとイエシロアリで、アメリカカンザイシロアリは屋根周りからから侵入することが多く、防げません。アメリカカンザイシロアリの生息地域では、木材全てを処理するなど、特別な対応が必要です。
↑木部処理を行う部分↑土壌処理を行う部分(床下にコンクリートを打設する場合)
(善)
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