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対策情報
2024/04/29

ヒラタキクイムシの生態と駆除

ヒラタキクイムシの駆除

 住宅のフローリングなどに穴を開けるヒラタキクイムシが人の目に触れるのは、年に1回、成虫が木材に穴を開けて飛び立つ時だけです。ところが、これを放置すると年々数が増えて被害が進み、木材の中を食い荒らしてしまいます。大きな被害に遭う前に、ヒラタキクイムシの生態を理解して対策を講じましょう。このコラムでは、ヒラタキクイムシの生態と駆除、予防について説明させていただきます。

目次

ヒラタキクイムシの生態

ヒラタキクイムシ 
 ヒラタキクイムシの成虫は、褐色で体長3~4mmの細長い甲虫です。(写真上) 4~8月頃、木材に1~2mmの小さい穴を開けて成虫が出てきます。外来種のアフリカヒラタキクイムシも国内に定着しており、こちらは年に2~3回、成虫が発生しますので、穴の数は2~3倍になります。木材からの脱出口の周りには木粉(フラス)が溜まるため、ヒラタキクイムシが開けた穴であることが分かります。(写真下)

ヒラタキクイムシのフラス

 写真提供 奥村敏夫氏

 ヒラタキクイムシの成虫は広葉樹材の道管(水が通る管)に産卵し、孵化した幼虫が木材を食べて育ちます。翌年4~8月に成虫となって木材から脱出して来ます。毎年これが繰り返されるため、表面には小さな穴が開いているだけでも、木材内部は激しく食い荒らされていることがあります。ヒラタキクイムシの幼虫は4~5mmの芋虫状です。
 ヒラタキクイムシが食べる木は、ラワン、ケヤキ、ナラ、シオジ、キリ、タブ、カバ、カシなどの広葉樹とタケです。針葉樹はヒラタキクイムシの栄養となるデンプンの含有量が少ないこと、ヒラタキクイムシが産卵する道管(水の通る管)がなく、細い仮道管しかないことから加害しません。
 シックハウス対策のため建材から放出されるホルムアルデヒドが規制され、ヒラタキクイムシなど木材害虫が発生しやすくなっています。住宅ではフローリングの下貼りのラワン合板からヒラタキクイムシが多発しています。濃い色のフローリングでは、脱出口の周りに溜まる木粉(フラス)が目立って発見しやすいです。壁下地合板、構造用合板からの発生も増加しています。成虫は、室内をホバリングし、サッシの下などに死骸が溜まるためヒラタキクイムシの発生に気が付くことがあります。ヒラタキクイムシを発見したら、発生場所の木粉と穴を探してください。
 ヒラタキクイムシは略して”キクイムシ”と呼ばれることもありますが、キクイムシという生物は別に存在します。キクイムシは海中に住み、木材を加害する甲殻類(エビやカニの仲間)です。弊社のヒラタキクイムシ用エアゾールの商品名は“キクイムシコロリ”ですが、虫の名前を呼ぶ場合は、”ヒラタ”は略してはいけません。

 

ヒラタキクイムシの駆除

 キクイムシコロリ

 ヒラタキクイムシを駆除するには脱出口にキクイムシコロリを注入してください。(写真上) キクイムシコロリには取り換え用の細長いノズルが付属していますので、このノズルに付け替えて、ノズルの先端を脱出口に挿入して注入してください。成虫は脱出口を開けた後も、交尾の準備ができるまで穴内に留まることがあり、また、材内に他のヒラタキクイムシが残っている可能性もあるため、脱出口にキクイムシコロリを注入して殺虫することができます。但し、キクイムシコロリに含まれる溶剤により、シミが発生することがありますので、目立たないところで試してから注入してください。
キクイムシコロリ

 ヒラタキクイムシは煙を嫌うため白アリスモークマンによる床下の燻煙も駆除に有効です。(写真下)

 

ヒラタキクイムシの予防

  ウレタン塗料などで木材を塗装すると、ヒラタキクイムシは木材を木材と認識しなくなることと、道管が埋まることから産卵できなくなり、加害を防ぐことができます。フローリング材は表面は塗装されていても、裏面や木口が塗装されていない場合には産卵されてしまいます。木材表面に木部処理用防蟻剤を塗布しても産卵防止の効果があります。弊社は多種の木部処理用防蟻剤を品揃えしています。(写真下) 白アリスモークマンにより床下を燻煙することも予防効果があります。
 壁の中やフローリングの裏など、一度ヒラタキクイムシが侵入すると、薬剤が届きにくく、駆除するのは大変です。予防に努め、ヒラタキクイムシの侵入を早期発見し、すぐに対策を講じるよう心がけましょう。(善)
木部用シロアリ予防駆除剤

(参考 奥村防蟲科学株式会社 奥村敏夫氏による社内勉強会2016.10.21)