韓国シロアリ対策協会国際セミナーに参加

2024年10月30日に韓国ソウル特別市の国会議員会館で、シロアリ対策の普及、啓蒙を目的に、韓国シロアリ対策協会国際セミナーが開催されました。主催はイ・ウォンテク国会議員議員室、キム・ソヒ国会議員議員室、主管が社団法人韓国シロアリ対策協会、後援は、山林庁、鍾路区庁、公益社団法人日本木材保存協会、弊社 株式会社吉田製油所でした。日本木材保存協会からは、近畿大学板倉教授を講師として派遣していただきました。講演内容は同時通訳により韓国語と日本語に相互に翻訳されました。筆者は、このセミナーに参加したので内容を報告します。
韓国国会議員会館
1.コ・ナムチョル 社団法人韓国シロアリ対策協会 会長 挨拶
気候変動で国内でシロアリ被害が拡大しているが、シロアリの研究や対策が進まず、市民はシロアリに関する知識がない。羽アリの群飛の時期には、自治体から韓国シロアリ対策協会への問い合わせが殺到するが、駆除費用が捻出できず対応ができない。このセミナーの出席者にシロアリ対策に協力してほしい。
2.キム・ソヒ 国会議員 祝辞
気候変動対策に貢献する木造建造物の増加に山林庁が尽力するが、シロアリがこれを害している。ソウル特別市鍾路区には宮殿が多く、シロアリの被害が発生している。被害は鍾路区以外にも広がり、防除を広める必要がある。被害者の苦痛は大きいが、対策はされていない。シロアリ先進国の日本から学び、防除できるようにするのが政府の役目である。山林庁と韓国シロアリ対策協会の協力を出発点に、政府による対策が講じられることを期待する。
3.イ・ミラ 山林庁次長 祝辞
気候変動対応、カーボンニュートラル実現は必須であり、山林庁では国産木材利用に尽力している。木造建築については高さ、面積の規制を緩和、建築技術も開発中で活性化を図っている。シロアリの研究は木造建築促進のため重要であり、シロアリ先進国から専門家を招いたこのセミナーは意義深い。
4.キム・ヒョンドク 社団法人韓国シロアリ対策協会 理事 発表
協会では建物のシロアリの診断、駆除、防除の技術者養成のための研修、セミナーの開催、モニタリングマップ作製を行っている。シロアリの生態、韓国内での被害状況を説明。韓国の建築に合った診断と防除方法の開発が重要である。
5.シン・ヘジ 財団法人気候変動センター政策研究所 発表
温室効果ガス排出量、気温上昇の現状と、その影響による気候変動リスクを説明。生物の絶滅、ウィルス、害虫の増加を予想する。シロアリについても気候変動で活動期が拡大し、外来種も侵入して被害が増えている。
6.チェ・ヨンソク 国立山林科学院木材工学研究科 発表
炭素を固定できる木造高層建築が増加している。気候変動で木材の劣化が促進される。韓国内ではヤマトシロアリが全国に生息する他、外来種も侵入し、被害が拡大している。シロアリに対する建物の耐久性を高めるための研究が進んでいる。
7.板倉修司 近畿大学教授 発表
日本のシロアリ生息状況と生態、被害、シロアリ駆除の市場規模を説明した。
8.吉川優弥 株式会社アグリマート 発表
日本のシロアリ防除法について説明した。
9.パネルディスカッション
座長 パク・ヒョンチョル 釜山大学生命資源科学大学 学長
パネリスト キム・ヒョンドク 社団法人韓国シロアリ対策協会 理事
チェ・ヨンソク 国立山林科学院木材工学研究科
板倉修司 近畿大学 教授
吉川優弥 株式会社アグリマート
ハン・ヨンシク 昆虫生態教育研究所 代表
キム・ウォンチョン 株式会社チャムウリ建設 代表
韓国側から板倉氏、吉川氏に日本のシロアリ防除法について多数の質問が寄せられた。昆虫生態教育研究所のハン氏からは、環境に優しい防除法を普及させるべきだとの意見があった。
今回のセミナーは公益社団法人日本木材保存協会の後援と講師の派遣を得て、シロアリ対策の歴史が長い日本の経験を詳しく伝えることができました。また、日本と韓国の協力関係の礎ができ、今後の交流が期待されます。(善)
講演者と来賓による記念撮影